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From Editor/選択肢が広がる住まいの場

2020/09/17

年に一度の別荘取材へ。蓼科や軽井沢は有名ですが、なかでも軽井沢は長野県内で特に人口が増加している地域で、コロナ禍の今も、すぐに使える中古や建て売りの別荘販売が好調とのこと。人々の暮らしや仕事の在り方が変わり、多くの人が別荘地として選ぶだけでなく、緑に恵まれ広い住まいを実現できる郊外への移住や多拠点居住を考える人が増えているためです。軽井沢が別荘地としての歴史をスタートしたのは1886年。英国国教会の宣教師がこの地を気に入り別荘を建てたことに端を発し、その後、著名な建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズやアントニン・レーモンド、吉村順三らによって教会や別荘が建てられ、そのうちのいくつかは現存しています。同県のほかの別荘地とは異なる歴史的魅力、スーパーやレストランなど施設の充実に加え、なんと言っても東京から新幹線で約1時間という利便性の良さが人気の秘密でしょう。
今回の取材で訪れた別荘の一つには、景色を堪能できるさまざまな居場所が点在していました。窓から階下を望むコンパクトで落ち着ける書斎で、テレワークをしているというオーナー。現在、ホームオフィスとゲストルームを、別棟に計画中なのだとか。これまで海外取材をするたびに、人々の暮らしの豊かさに驚かされました。平日は都心部のコンパクトなアパートメント、週末は車で2時間程度の郊外の広々とした住まいへ。そして夏のバケーションには、郊外の住まいで自然に身を委ね、暮らしを充実させるためのDIYに勤しむ。そのときは、うらやましくも私たちにはどこか遠い話に感じました。
コロナ禍の今、テレワークだけで仕事を進めていくのは難しいと思う反面、時間的余裕ができたことにより、日本においても豊かな暮らしがかなえられるかもしれないとも思います。移住するか、多拠点で居住するか、そしてその住まいを借りるか、購入するか。これからの暮らしについて、前向きに考える機会としたいものです。

Elisa SUMITA, Editorial Director