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2015年02月23日 11:59

From Editor モノのかたち

 54年を経た今でもつくり続けられている、キッコーマンの赤いキャップの卓上醤油瓶。スーパーの陳列棚に並ぶその姿は、古さを越えてレトロな雰囲気を醸し出しています。この卓上醤油瓶をデザインした栄久庵憲司(1929-2015)さんの悲報が、先日、国内外のニュースで流れました。戦後、日本のグッドデザイン運動の一翼を担ったインダストリアルデザイナーの草分け的存在で、水が落ちてくるときの自然な形からデザインしたという液だれしない醤油瓶は、日本的デザインの典型としてニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵されているほど。
 名前に聞き覚えはなくとも、日本人であればその仕事は必ず目にしているはず。コスモ石油のロゴマーク(1986)やゆりかもめ7300系電車(2014)など、多岐にわたる仕事をしているGKデザイングループのトップでもありました。デザイナーが表に出ない匿名性というのが、本来のインダストリアルデザインのあるべき姿だと思いますが、「すべてのモノは誰かがデザインしている」と改めて見ると、さまざまな興味が湧いてきます。これまで無意識下にあった周囲のモノたちは、いつ、誰が、何を考えてデザインしたのかと。
 かつて、イギリスの詩人でありデザイナーでもあったWilliam Morris(※1)は、「どう役に立つか分からないもの、美しいと思わないものを家に置かないこと」と言ったとか。もちろん必要なモノは人それぞれ、また時にはそれらを見返して整理することも大切でしょう。モノには、それぞれ機能とそこから生まれた“形=デザイン”があります。また興味深いのは、誰かの手に渡った後、デザイナーの意図とは異なる用途で使用される可能性があること。たとえば、花を生けるときに花器だけでなく、グラスやピッチャーでも代用できるように。
 それでは、Morrisの言う“美しいもの”とはどのようなものでしょうか。一般的には普遍性を持つモノを言うのだと思いますが、それも主観を交えれば絶対とは言えません。好みのモノたちで空間をコーディネートするためには、自分の美意識が必要です。それを育てるには、たくさんのアートやモノ、空間を見る経験が大切。それが、たとえ自分の暮らしに必要か否かにかかわらず。たとえば、美しい色とフォルムのイタリア・Rina Menardi(リナメナルディ)の器(写真)。私が持っているのは赤ですが、見るたびにほかの色も欲しくなります。多様なモノがあふれる時代だからこそ、一つひとつ吟味することで、自分だけの楽しい住まいを実現できるのです。

Elisa SUMITA, Editorial Director


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※William Morris(ウィリアム・モリス)/生活と芸術を一つにしようとするデザイン思想を実践した「アーツ・アンド・クラフツ」運動の中心人物の一人

2015年02月23日 11:59 | no.75 | | Comments (0) | TrackBack (0)